債権者区分を改善し銀行融資の企業格付けを引き上げる方法

債権者区分の改善 資金調達の方法
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債権者区分を改善することは、会社の経営において非常に重要です。

なぜならば、銀行は債権者区分によって融資の可否を判断しているため、債権者区分が改善されると銀行から融資を受けられる可能性が高くなるからです。

債権者区分は「正常先」「要注意先(その他要注意先と要管理先)」「破綻懸念先」「実質破綻先」「破綻先」の5種類があり、正常先や要注意先までであれば融資を受けることができます。

現在「破たん懸念先」以下の債権者区分であっても、それを改善して「要注意先」以上にまで上げることができれば、融資をしてもらえる可能性が高くなるのです。

このようなことから、企業経営や資金繰りにおいて、債権者区分を上げることが重要視されています。

ここでは債権者区分の改善方法について詳しく解説していきます

金融機関がどのように債権者区分を決定するのか、重視しているポイントは何なのかを理解すれば、効果的に金融機関にアピールすることができ、債権者区分の改善につなげていくことができるでしょう。

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金融機関が債権者区分を行う理由

金融機関は債権者区分によって融資先の格付けを行っています。

そして、この債権者区分が低くなればなるほど融資の回収ができない可能性が高まるため、金融機関はその債権者区分のランクに応じて「貸倒引当金」を積んでいます。

貸倒引当金とは、融資が回収できなかった場合のことを想定して、金融機関のバランスシート上であらかじめ「負債」として計上しておく項目です。

金融機関は、この貸倒引当金の金額を決めるために債権者区分を行っています。

債権者区分は、以下の5つに分けられており、それぞれの債権者区分に応じて、金融機関の貸倒引当金の割合も決められています。

債権者区分 貸倒引当率
正常先 約0.2%
要注意先 その他要注意先 約5%
要管理先 約15%
破綻懸念先 約75%
実質破綻先 100%
破綻先 100%

このように、債権者区分が低ければ低いほど貸倒引当金を多く積まねばならず、金融機関の利益が減ってしまうという仕組みになっています。

債権者区分が改善され、格付けのランクが上がった場合は、銀行側は「貸倒引当金」を少なくすることができます。

貸倒引当金が減ることによって余ったお金は、金融機関の利益に組み入れることができるため、債権者区分の改善は会社側だけではなく、金融機関側にも大きなメリットがあるのです。

また、金融庁が金融機関に対して「コンサルティング機能を発揮するように」という通達を出しているため、金融機関は「企業と一緒に経営の改善に向け努力する」という姿勢をとっています。

経営の問題点を金融機関に知られたくないということで対話を避ける経営者もいますが、積極的に経営内容や財務内容を開示し、金融機関のアドバイスを得ながら債権者区分の改善に向けて努力することが大切だといえます。

中小企業の債権者区分で重視されるポイント

中小企業の債権者区分の判断については、経営の実態に応じて柔軟な判断をするようにという指示が金融庁によって行われています。

そのため中小企業や零細企業においては、実態に即した債権者区分の判断ができるように、以下のような色々な要素を勘案して決められています。

  • 企業の財務状況
  • 企業の技術力
  • 企業の販売力や成長性
  • 役員に対する報酬の支払い状況
  • 代表者等の収入状況や資産内容
  • 保証状況と保証能力

債権者区分の決定では、このような要素が見られているということを頭においておきましょう。

企業の技術力や今後の成長性は、実績としての数字には表れないものですが、債権者区分において評価される項目となっているため、積極的にアピールする必要があります。

債権者区分を引き上げるためにすべきことを解説

債権者区分が「破たん懸念先・要管理先」から「その他要注意先」になると、担保として差し入れているものが「不良債権」から「正常債権」になります。

そのため、金融機関による不良債権処理をされにくくなるというメリットがあります。

また、有利な条件ではないものの新規融資を受けられる可能性も出てくるため、債権者区分を早急に改善する必要があります。

債権者区分が「その他注意先」の場合、格付けが上がって「正常先」になると、新規融資の審査が通りやすくなり、より有利な条件で融資を受けられる可能性が高まります。

このように、債権者区分を改善すると、資金繰りの面で大きなメリットがありますので、そのための努力をしっかりと行うことが大切です。

債権者区分改善のためにすべきこと1:再建計画の策定

破たん懸念先に分類された場合であっても、経営改善計画を策定し、その再建計画が合理的で実現可能性が高い場合は、要注意先に引き上げてもらうことができます。

要注意先になると融資を受けられる可能性が出てきますし、金融機関側にとっても貸倒引当金を75%から15%まで引き下げることができるので、大きなメリットがあります。

再建計画作成におけるポイント

再建計画を作成する際には、以下のポイントに注意して作成する必要があります。

  1. 計画期間が概ね5年以内にで、その期間内に実現可能性が高い計画であること
  2. 計画期間終了後は、債権者区分が正常先となるように計画を組むこと。(条件によっては計画終了後債務者区分が要注意先であっても良い場合もある)
  3. 他の取引金融機関も納得している計画であること
  4. 債権放棄や現金贈与など、債務者への資金提供が含まれていないこと

金融機関が常に参考にしている「金融庁の金融検査マニュアル」においても、事業計画書を作成できる能力は、債権者区分を判断するうえで重要な要素の一つとされています。

そして、この金融庁マニュアルにおいて、「実現性が高い抜本的な事業再建計画があれば、債権者区分を下げなくても良い」と規定されているため、しっかりとした事業計画書を作成できれば債権者区分の改善につながります。

事業再建計画書の中では、以下の点に着目し、資金繰りを改善するための対策を記載するようにしましょう。

  1. 主力となるビジネスに注力するなど、選択と集中を行う。
  2. 会社の資産を売却する。
  3. 人件費の削減を必ず織り込む。
  4. 役員の報酬を削減する。
  5. 社長自ら犠牲を払う覚悟を見せる。
  6. 経費を削減する。
  7. 製品やサービスを改良し、売上や収益が上がるようにする。
  8. 既存客だけではなく、新規客を開拓する方法を記載する。
  9. 社員ごとに具体的な行動計画を立てさせ、会社全体のパフォーマンスを上げる。
  10. 再建計画が甘いと思われるため、売上の増加は織り込まない。
  11. 経営の悪化を人のせいにしない。

債権者区分改善のためにすべきこと2:減資をする

減資とは、会社の資本金を減少させることをいいます。

債権者区分改善のために減資をする場合は、減少させた分の資本金を累積赤字などの補てんにあてます。

このように減資によって負債を少なくすることができるため、会社のバランスシートを整え、安定性が高い会社だという印象を持たせることができます。

また、減資によって「資本金1億円以上の企業」から「資本金1億円以下の企業」になった場合は、大企業から中小企業になることができ、それによって大きな節税のメリットが得られることもあります。

ただ、減資をすると会社の資本金が減ることになりますので「会社としての信用力」が下がってしまうというリスクがあります。

上場会社であれば売上や利益について細かく開示する義務があるため、資本金の額はそれほど重視されません。

しかし、未上場の中小企業の場合は、細かな経営状況について情報公開することはまれなため、どうしても「資本金の額」で会社の信用力を判断されてしまう場合が多くなります。

減資を考える際には、このようなメリット・デメリットがあることを良く理解し、慎重に検討するようにしましょう。

債権者区分改善のためにすべきこと3:経営改善のアピール

債権者区分の改善のためには、以下の二つの内容を金融機関の担当者に伝える必要があります。

  • 経営者として企業の現状を把握できているということ
  • どのように改善するかという具体策があること

金融機関側も、融資先の債権者区分が上がると貸倒引当金を減らすことができるというメリットがあるため、経営者の話にきちんと耳を傾けてくれます。

また、「経営者からの借入金がある」「役員報酬が多い」というような場合は、見方を変えれば債務超過と言えない場合もあるものの、金融機関の担当者がそれに気づいていない場合もあります。

金融機関の担当者と面談する際に、そういったポイントを経営者があらかじめ探して理解しておき、効果的にアピールすることで債権者区分の改善につながることも多くあります。

債権者区分の改善を行いたい場合は、自ら色々な事例を学んでおくことが大切です。

役員の給与が多い事例

リスケジュールや返済の延滞はないけれども、役員の給与が多いことが原因で赤字決算という会社もあります。

この場合、企業活動による赤字ではなく、役員報酬による赤字のため、要注意先ではなく正常先と認められる場合があります。

正常先になると有利な条件で融資を受けることができますので、会社にとってもメリットは大きくなります。

代表者や役員からの資金の借り入れが多い事例

代表者や役員からの借入金は「返済を求められない借り入れ」であるため、債務ではないと判断される場合があります。

この場合、借入金は負債ではなく「会社の自己資本」と見なすことができるため、負債が減り資産が増加することとなりますので、その結果債権者区分を改善することにつながります。

経営者の資産が多い事例

社長の自宅や役員(社長の血縁者)の財産が多い場合、保有する土地や収益不動産を加えて総合的に判断すると債務超過ではなくなることがあります。

こういった場合は、債権者区分が改善される可能性があります。

ただし、それらの土地や建物に住宅ローンや担保設定があると認められない場合がありますので注意しましょう。

経営者が身銭を切る覚悟がある事例

期日一括返済の期日をたびたび延長していたけれど、方針を変更し、経営者個人による長期間の約定返済に変更した場合は、会社と個人の資産が一体であると見なしてもらえる場合があります。

経営者の資産が多く、私財を提供する覚悟がある場合は、個人の資産を含めた状態で判断してもらうことができるので、破綻懸念先ではなくその他要注意先に格付けが上がる可能性があります。

製造業で技術力がある事例

毎期赤字続きで債務超過、リスケジュールが実施されている場合であっても、他社と確実に差別化できるような技術力を持っている場合は今後も一定の売り上げを見込むことができます。

こういった場合は、それらの点が評価されて債権者区分が上がり、破たん懸念先から要注意先へと格上げされる場合があります。

まとめ

債権者区分の改善は、資金繰りにおいて非常に重要です。

金融機関の担当者と対話し、会社の状態や将来性をアピールすることで、債権者区分を改善し、融資を受けやすい状態することができます。

様々な努力を行ったにも関わらず債権者区分が改善できず、融資が受けられないという場合もあるかもしれません。

しかし、そのような場合でも、ファクタリング不動産担保ローンなど、様々な資金調達の方法がありますので安心してください。

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