【中小零細企業の資金調達に】少人数私募債とは?募集の仕方と発行手続きを紹介

借りない資金調達法

少人数私募債とは50人未満の少数の人を対象に発行する社債のことをいいます。

少人数私募債の発行には保証人や担保が不要で厳しい審査もないため、金融機関からの借り入れに比べて簡単に資金調達を行えることが大きなメリットです。

そして、有価証券取引書などの提出義務もないため、少人数私募債は一般的な社債の発行よりもコストが少なくてすみ、簡単に発行できるという利点もあります。

少人数私募債は募集のルールさえ理解しておけばどのような企業でも発行することが可能です。

資金調達は会社経営にとって重要事項のひとつですが、少人数私募債の発行ができれば、資金調達の方法をひとつ増やすことができますし、金融機関への依存を減らすこともできます。

ここでは、少人数私募債の募集の仕方や発行手続きなどを詳しく解説していきますのでぜひ参考にしてください。

少人数私募債の概要

少人数私募債は資金調達方法の一つであり、会社が募集する債券、つまり社債です。

社債は募集人数によって二つに分けることができ、募集人数が50人以上のものは「公募債」、50人未満のものは「私募債」と呼ばれます。

そして、販売する相手が少人数である場合は「少人数私募債」、相手がプロの投資家である場合は「プロ私募債」に区分されます。

社債は金融商品取引上では「有価証券」にあたるため、社債を不特定多数の人に発行する場合(50人以上の人に発行する場合)は「有価証券の募集」となります。

有価証券の募集では、有価証券届出書の提出や、有価証券報告書による継続的な情報開示が必要となるため、社債の発行に大きな手間やコストがかかるというデメリットがあります。

しかし、少人数私募債の場合「有価証券の私募」にあたるため、有価証券届出書などの複雑な書類の届け出が必要がなく、発行コストを抑えることができるというメリットがあります。

少人数私募債の特徴はこのようになっています。

募集人数 50人未満
譲渡制限 あり
発行総額 1億円未満
募集金額 社債管理者を設置しないため、社債総額÷社債1口の価格が、50以下になるように設定する
有価証券届出書提出の義務 なし
有価証券報告書提出の義務 なし
目論見書作成の義務 なし
社債管理者設置義務 なし

少人数私募債は、50人未満に社債を発行する場合となっていますが、発行後も50人未満を維持しなければなりません。

そのため、少人数私募債には譲渡制限を設定する必要があります。

また、社債一口あたりの金額が多いと「社債管理者」を設定する必要がでてきます。

社債管理者とは、社債を保有する投資家の利益を守るために設立される会社のことで、社債発行の事務一般や社債の元利金の支払を代行します。

一般的には、社債管理者は発行会社の主要取引銀行が担う場合が多いのですが、多くの手続きや手間、コストがかかりますし、発行会社の一存だけですすめられるものではなくなってきてしまいます。

少人数私募債は手間やコストを省いて簡単に発行できることがメリットですので、それを最大限生かすためにも、「社債総額÷社債一口の最低金額=50未満」とし、社債管理者の設置が必要ないように設定する必要があります。

発行できるのは法人のみ、個人事業主は発行できない

少人数私募債は手軽に発行できることが大きなメリットですが、発行主体は法人に限られており、株式会社、有限会社、合同会社、合名会社、合資会社が発行することができます。

個人事業主は発行することができませんので注意が必要です。

少人数私募債のメリット・デメリット

少人数私募債は手軽に発行することができ、スムーズにまとまった額を資金調達ができるという大きなメリットがあります。

しかし、いくつかのデメリットもあるため、少人数私募債の発行を考える場合は、メリットとデメリットを慎重に検討しましょう。

メリット デメリット
保証人や担保が必要ない 償還期限に元金を一括返済する必要がある
事前届け出などの手続きが不要でコストが発行コストがかからない 勧誘人数が49名以下と制限がある
償還期限や償還方法、利息を簡単に設定できる 購入者がなかなか見つからない場合がある
社債管理会社の設置が不要
経営体質が強化され金融機関からの評価が上がる場合がある
少人数私募債の利子は会社経費になる

募集するまでの手続き

少人数私募債の募集・発行手続きは簡単ではありますが、取締役会決議が必要なため、ある程度時間がかかります。

スムーズに資金調達を行うためにはスケジュールを意識して進めるようにしましょう。

少人数私募債の発行手順は以下のようになっています。

事業計画書の作成(社債発行条件など)

まず、少人数私募債募集の目的となる「事業計画書」を作成します。

事業計画を考えることで、必要な資金や期間が明確となります。

募集内容を決定する

少人数私募債の募集には取締役会の決議が必要ですので、開催前に以下のような社債の募集要項を決定しておく必要があります。

  • 発行目的
  • 発行総額
  • 発行価額
  • 利率
  • 償還期間
  • 発行時期
  • 利息の支払期間

取締役会の決議

少人数私募債の発行は経営者一人の決断で行うことはできず、取締役会の承認が必要となります。

出席した取締役の過半数が賛成すれば、少人数私募債の発行が承認されます。

投資家に少人数私募債の募集をするときには、取締役会の議事録を証拠として提示する場合もありますので、かならず議事録を作成し、保管しておきましょう。

社債募集要項の作成

投資家に少人数私募債への投資を募るための募集要項を作成します。

社債申込書と裏面に募集要項を記載することが多くなっており、以下のような項目を記載します。

  • 会社の商号
  • 社債募集総額
  • 社債の種類(少人数私募債)
  • 社債の額面金額
  • 社債の利率
  • 発行価額
  • 償還金額
  • 社債償還の方法
  • 利息の支払方法および期間
  • 中途解約の方法及び利率
  • 譲渡制限
  • 申込期間
  • 募集方法
  • 払込期日
  • 払込銀行
  • 申込取扱場所

社債引き受け者の募集

少人数私募債を申し込んでくれそうな投資家のもとを訪問したり、説明会を催してプレゼンを行うなどして社債引き受け者の募集を行います。

ここで、投資家が集まらない場合は募集条件を投資家有利に変更するなどの見直しが必要となります。

誰に買ってもらう?

少人数私募債を発行する場合は、社債を購入してくれる人を自分たちで探す必要があります。

少人数私募債では、経営者の親族や知人に購入してもらうことが一番多くなっていますが、なかなか私募債の購入者が見つからない場合もあります。

そのような場合は説明会を開催して不特定多数の人を対象にして勧誘したり、コンサルタント会社に相談すると良いでしょう。

特に、コンサルタント会社に相談すると、説明会の開催などをアドバイスし、手助けしてくれることもあります。

少人数私募債申込の手続き

少人数私募債申込の手続きでは、購入者に「社債申込書」を記入してもらう必要があります。

社債申し込み書には、後日のトラブルを防ぐため、少人数私募債の一口の金額や利率、償還方法や利息の総支払額、会社名を記載しておくと良いでしょう。

この社債申込書以外での社債申込はすべて無効と会社法で定められているので、この申込書には以下の項目を必ず記入してもらい、署名と捺印をもらうようにします。

  • 購入者の氏名や住所
  • 引き受けたい金額や口数
  • 希望する払い込み金額

引き受けに同意してくれた投資家から、署名捺印済みの社債申込書を受け取り、それをを預かった証明として「募集引受書」を発行し、投資家に送付します。

購入者決定後の手続き

少人数私募債の購入者が決定した後は、「社債募集決定通知書の送付」「社債預かり証の発行」「社債名簿(社債原簿)の作成」という3つの手続きがあります。

社債募集決定通知書の送付

誰にどれくらいの口数の少人数私募債を引き受けてもらうかが決定したら「社債募集決定通知書」を送付します。

「社債募集決定通知書」は、払い込み期日の前日までに送付する必要があります。

通知書には、引き受けてもらう社債の口数や金額、社債代金の振込口座などを記載しましょう。

この通知書を引受人が受け取ると、指定した口座に振込を行ってくれます。

もしも申込者が多かった場合は、「会社を応援してくれる人かどうか」「お金だけが目的ではないか」という点を考慮しながら審査を行いましょう。

投資目的だけで購入した人は、その後の金利や株式市場の動向によって社債を中途解約してしまう場合もあります。

途中解約があると購入者に資金を返還しなければならず、会社にとってはリスクが大きくなってしまいます。

できるだけ満期まで保有してもらえるように、会社を応援してくれる人を引受人に選ぶようにします。

社債預かり証の発行

投資家に社債金額を振り込んでもらい、それが確認できれば「社債預かり証」を発行します。

社債預かり証には以下の内容を記載します。

  • 入金日
  • 入金金額
  • 少人数私募債の金額と口数

社債原簿の作成

社債を発行した会社は様々な事項を記載した「社債原簿」を作成し、保管する義務があります。

これは少人数私募債の場合でも必要です。

社債原簿に記載される事項は以下のようになっています。

  • 社債の種類(社債の利率や利息の支払方法、償還方法は期限を記載)
  • 社債の種類ごとの金額
  • 各社債とひきかえに払い込まれた金額や振込日
  • 社債権者が社債を取得した日
  • 社債権者の指名や住所(無記名社債の場合は不要)

利息支払い

利息の支払では「支払った」「受け取っていない」というようなトラブルが発生する場合もありますので、手順を踏んで利息を支払うことが大切です。

まず、利息を支払う前に「社債利息支払い通知書」を購入者に通知します。

そして、そのあとで利息を入金し、入金後は「社債利息受取確認書」を購入者に送付し、署名と押印をもらうようにしましょう。

社債の満期償還

少人数私募債の場合は、満期時に一括償還することになっています。

まず、償還日の一カ月前に「満期となる日付」を購入者に知らせる通知を送り、その後償還します。

しかし、ここでも「満期償還を受けていない」とトラブルが起こる可能性がありますので、償還したことを確認する書類を作成して署名押印をもらったり、預かり証を返却してもらう等の手続きを行うことが大切です。

まとめ

少人数私募債による資金調達は、どのような企業でも行うことができること、金融機関の融資のような審査がないこと、手続きが簡単で届け出の必要がなく発行の手間やコストがかからないことが大きなメリットとなっています。

少人数私募債の購入者を探すことが難しい場合もありますが、経営者の親類や知人を中心に「会社を応援したい」という人を探すことができれば、少人数私募債は会社にとって有力な資金調達方法の一つとなり、銀行融資のみに頼らないような強固な経営体制を築くことにもつながります。

経営者として資金調達を考える際には、メリットが多い少人数私募債の発行もぜひ検討してみてください。