個人事業主が払うべき税金と計算方法まとめ

会社経営の基礎知識
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昔ながらの日本企業に多かった「終身雇用」や「年功序列」といった考え方は終わりを迎えようとしており、今は会社に勤務しているけれど近いうちに「独立して働きたい」と考えている方は少なくありません。

ただ、独立してすぐ法人を設立する方は稀。

多くは「個人事業主」となるのが一般的です。

この時に考えるべき最大のポイントはやはり「収益を出せるか」ということ。

まず売れなければビジネスとしては失敗に終わってしまいます。

ただ、売れればそれでいいのかというと、もちろんそうではありません。

結果的に利益を生み出すためには、「コスト」のことを考えておく必要があります。

コストとは、例えば仕入れにかかるような費用もありますが、それだけではなく「税金」もそのひとつです。

では、個人事業主としてビジネスを始めると、どのような税金がかかってくるのでしょうか。

見てみましょう。

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個人事業主が支払うべき税金とは?

ここからは、実際に個人事業主として事業を運営していく上で、支払う必要のある税金について、個別に紹介していきます。

所得税

まずは、所得税についてです。

これは所得があれば誰しも払っているもので、当然サラリーマンの方でも支払っているのですが、普段はあまり意識していない方がほとんどです。

なぜなら、会社に勤務して給与収入を得ている場合、毎月の給与から「源泉徴収」という形で自動的に支払われているから。

個人事業主となれば当然「会社が勝手にやってくれる」ということはありませんから、どのようなものか理解しておく必要があります。

所得税はその名の通り、「所得」に対してかかる税金のこと。

その年の1月1日〜12月31日の間の所得に対して課税されるもので、個人事業主の場合、所得はその事業で得た収益から必要経費を引いた額で計算されます。

例えば靴を売る事業を始めた場合、その靴を売った金額が収益で、仕入れた金額などが経費。

これを差し引いて残った金額が所得となります。

そのため、赤字の場合には当然所得がマイナスとなることもあり得ます。

所得税を計算する際の課税所得金額は、「収入−必要経費−控除」で導き出されます。

控除についてはそれぞれ人によって受けられるものが異なりますので別途確認してください。

さらに所得税額を導き出すためには、「課税所得金額×税率−課税控除額」という計算をします。

税率と控除額については、下記の表を確認してください。表に応じた額からその年の所得税が計算できます。

課税される所得金額 税率 控除額
195万円以下 5% 0円
195万円を超え 330万円以下 10% 97,500円
330万円を超え 695万円以下 20% 427,500円
695万円を超え 900万円以下 23% 636,000円
900万円を超え 1,800万円以下 33% 1,536,000円
1,800万円を超え4,000万円以下 40% 2,796,000円
4,000万円超 45% 4,796,000円

(平成28年4月1日現在法令等 平成27年分以降)

住民税

続いては、住民税について。こちらはサラリーマンの方でも馴染みのあるものですね。

ただ、その内訳までは知らないという方も多いのではないのでしょうか。

住民税には「都道府県民税」と「市町村民税」という2つの種類があります。

さらに、それぞれ「均等割」、「所得割」という考え方があり、住民税はこれらを足し上げて算出されます。

つまり「都道府県民税(均等割)+都道府県民税(所得割)+市町村民税(均等割)+市町村民税(所得割)=住民税額」ということになります。

このうち、それぞれの均等割についてはすぐにわかります。

というのも均等割というのは誰もが一定の額を支払うということで、あらかじめその額が決まっています。

例えば、東京都の均等割を見てみると、都道府県民税は1,500円、市町村民税は3,500円となっており、合計5,000円です。

では、所得割はどうでしょうか。

これは都道府県民税と市町村民税を合わせて考えるとわかりやすいです。

計算方法は「(前年の総所得金額等-所得控除額)× 税率-税額控除額」です。

所得控除額や税額控除額、それぞれ人によって受けられるものが異なるので、個別に確認が必要となります。

税率は一律10%で、このうち6%が都道府県民税、4%が市町村民税としてカウントされています。

この計算で導かれたものを、それぞれ足しあげれば課税される住民税の額がわかります。

個人事業税

サラリーマンの方とは最も縁遠い存在が個人事業税です。

個人事業税は、個人の方が営む事業のうち、地方税法で決められた事業に対してかかる税金です。

一部対象外の事業もあるのですが、基本的にほぼ全ての事業でかかると考えておいてください。

計算方法は「(収入−必要経費−各種控除−事業主控除)×税率」となっています。

各種控除は人によって受けられるものが異なりますので、個別に確認する必要がありますが、事業主控除は一律年間290万円と決まっています。

消費税

サラリーマンの方などには、どちらかというと物品等を購入した際に支払う消費税の方が一般的です。

個人事業主の場合、消費者に物品やサービスを販売した際に受け取った消費税を税務署に納付する必要が出てきます。

ただし、無条件に支払う必要はありません。

まず、開業から2年間は「免税事業者」となっているので、諸費税を納付しなくても問題ありません。

又、消費税には「小規模事業者に係る納税義務の免除」という項目があり、これによれば基準期間における課税売上高が1,000万円以下の場合には消費税の納付が免除されます。

それ以外の場合、基本的には消費税を納付する必要がありますが、「販売等により受け取った消費税−仕入れ等により支払った消費税」で計算することになります。

例えば10,000円のものを仕入れて30,000円で販売(いずれも税抜)した場合、仕入れの際に支払った消費税は800円、売った際に受け取った消費税は2,400円です。

このケースでは2,400円−800円=1,600円を消費税として納付することになります。

ただし、こうした計算を個別に行うのは非常に面倒なため、課税売上高が5,000万円以下の場合は、よりスピーディに計算のできる「簡易課税制度」が用意されています。

納付額の計算方法は、「売上の消費税−(売上の消費税×みなし仕入率)」です。

みなし仕入れ率は業種によって異なりますので、以下の表を確認してください。

業種 みなし仕入率
第一種事業(卸売業) 90%
第二種事業(小売業) 80%
第三種事業(製造業等) 70%
第四種事業(その他の事業) 60%
第五種事業(サービス業等) 50%
第六種事業(不動産業) 40%

個人事業で租税公課として認められるのは?

税金の中には「租税公課」として認められているものがあります。

ここでいう租税公課とは経理上の勘定科目のひとつで、この科目には経費として認められる税金が振り分けられます。

つまり、税金の中にも経費として認められるものと認められないものがあるということです。

ここでは、経費として認められる税金を紹介していきます。

自動車税

車の所有者に対して毎年課税されるのが自動車税。

事業用に使っている自動車であれば、その自動車税は経費として認められます。

なお、自動車税だけでなく、自動車取得税や自動車重量税なども同様に租税公課に振り分けられ、経費となります。

登録免許税

登録免許税とは不動産などを登記する際に、その登記を受ける人が国から課される税金。

事業所用として新たに土地や建物を売買したタイミングで支払うことになるものです。

こちらも確定申告の際には租税公課として認められ、経費として扱うことができます。

不動産取得税

不動産を取得した際は、登録免許税以外にも不動産取得税を支払う必要があります。

こちらも経費として認められる税金のひとつです。

印紙税

売買契約書に記載された金額に応じて課税されるのが印紙税。

契約書に印紙を貼る行為でもおなじみです。

この印紙税も租税公課に分類されますので、領収書をしっかりと取っておくようにしてください。

追徴課税に含まれる税金まとめ

本来納税すべき金額に比べ、確定申告によって納税した額が少なかった場合、追徴課税の対象となり、不足分の税金を納付しなければなりません。

さらに支払わなければならないのは税金の不足分だけではなく、別途税金を支払わなければなりません。

ケースによって支払わなければならいない税金が変わりますので、それぞれ紹介していきます。

過少申告加算税

確定申告の際に収めた税金が、本来収めなければならない税金より少なかった場合に課税されるのが「過少申告加算税」です。

追加で支払う税金のうち、50万円までは10%、50万円を超える部分については15%が課税されます。

例えば追加で収める税金が100万円の場合、過少申告加算税は「50万×0.1+50万×0.15=12万5,000円」となります。

なお正当な理由がある場合や、調査通知以後、更正・決定予知前に修正申告した場合等はこの税金は減免されます。

無申告加算税

期限内に確定申告を行わなかった場合に課税されるのが「無申告課税額」。

本来支払うべき税金のうち、50万円までは10%、50万円を超える部分については15%が課税されます。

過去5年以内に無申告課税または重加算税を課されたことがある場合は、それぞれ5%追加されます。

一方、正当な理由がある場合や、調査通知以後、更正・決定予知前に修正申告した場合等はこの税金は減免されます。

不納付加算税

所得税の納付が期限内に行われなかった場合に課税されるのが「不納付加算税」です。

本来納付すべき税額の10%が課税されます。

なお、正当な理由がある場合や、調査通知以後、更正・決定予知前に修正申告した場合等はこの税金は減免されます。

重加算税

税金の申告について、仮装や隠蔽の事実が認められた場合には「重加算税」を支払わなければなりません。

内容としては、下記ををそれぞれ支払うことになります。

  • 過少申告加算税の代わりに、追加で支払うべき税金の35%
  • 無申告加算税の代わりに、本来支払うべき税金の40%
  • 不納付加算税の代わりに、本来支払うべき税金の35%

延滞税

さらに、期限内に税金が収められていないということで「延滞税」がかかります。

納付期限翌日から2ヶ月までの間に納付する場合、延滞税は以下の計算式で求められます。

本来支払うべき税額 × 「7.3%」か「特例基準割合+1%」のいずれか低い割合 × 納付期限の翌日から完納の日までの日数 ÷ 365

納付期限から2ヶ月以上経過してしまった場合は下記の計算式が適用されます。

本来支払うべき税額 × 「14.6%」か「特例基準割合+7.3%」のいずれか低い割合 × 納付期限の翌日から完納の日までの日数 ÷ 365

追徴課税が支払えないという場合はどうなるの?

以上のように、追徴課税となってしまうと、本来支払うべきはずだった税金の額を大きく超えた負担が発生してしまいます。

そのため、確定申告はミスなく、そして税金の支払いは確実に行っておく必要があります。

では万が一、追徴課税されたけれど「支払う余裕がない」という場合はどうなってしまうのでしょうか?

基本的に、すでに発生した税金について、税務署が支払いを免除してくれるということはありません。

仮に自己破産をしたとしても、税金の支払いは残ります。

そのため、解決するためには「支払う」以外の方法はありません。

ただし、下の要件に全て当てはまる場合には、1年以内に限って「換価の猶予」が認められる場合があります。

換価とは簡単に言えば「差し押さえ(強制執行)」を指します。

  1. 国税を一時に納付することにより、事業の継続又は生活の維持を困難に するおそれがあると認められること
  2. 納税について誠実な意思を有すると認められること
  3. 換価の猶予を受けようとする国税以外の国税の滞納がないこと
  4. 納付すべき国税の納期限から6か月以内に申請書が提出されていること
  5. 原則として、担保の提供があること

また、同様に1年に限って「納税の猶予」が受けられる可能性があります。

この条件としては、以下のもの全てに該当する必要があります。

①次のAからFのいずれかに該当する事実があること

  • A納税者がその財産につき、震災、風水害、落雷、火災その他の災害を受け、又は盗難に遭ったこと
  • B納税者又はその者と生計を一にする親族が病気にかかり、又は負傷したこと
  • C納税者がその事業を廃止し、又は休止したこと
  • D納税者がその事業につき著しい損失を受けたこと
  • E納税者に上記AからDに類する事実があったこと
  • F本来の期限から1年以上経過した後に、修正申告などにより納付すべき税額が確定したこと

②猶予該当事実に基づき、納税者がその納付すべき国税を一時に納付する ことができないと認められること
③申請書が提出されていること(上記「1F」の場合は納期限までの提出)
④原則として、担保の提供があること

上の2つの猶予の要件を満たさない場合には、税務署にお願いをして「分割払い」を認めてもらう方法を試すことになります。

まとめ

資金繰りが厳しい場合には、確定申告の時期は憂鬱なもの。

ついつい自分に都合の良い申告書を作成したい気持ちになってしまいますが、これは絶対にNG。

上で紹介したような追徴課税を受けることになってしまいます。

確定申告は正確に、税金の支払いは確実にするべきですが、そのためには個人事業主として経営を安定させておくことが必要です。

仮に一時的な資金難に陥って税金の支払いも怪しいような場合は、銀行でも借りられるビジネスローンを経営資金の足しにするなどして、うまく乗り越えていきましょう。

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