銀行から貸し渋りや貸し剥がしを受けると資金繰りが悪くなり、最悪の場合会社が倒産してしまう場合もあります。
中小企業にとって、融資してくれる銀行と良好な関係を築くことは大切です。
しかし、銀行の言うがまま貸し渋りや貸し剥がしを受け入れてしまうと、会社の存続が危うくなってしまいます。
経営者自身がしっかりと「貸し渋りや貸し剥がしのための対策」を考え、実行にうつしていくことが大切です。
貸し渋りや貸し剥がし対策は、以下のような方法があります。
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会社の業績や財務内容を改善し、信用格付けを上げる | 返済を延滞や虚偽の契約をしない |
事業計画書を作成し、会社の将来性をアピールする |
それでは、これらの方法について詳しくみていきましょう。
銀行が貸し渋りを行う理由
銀行の貸し渋りとは、会社の経営状況に問題がない場合でも新規融資や追加融資を行ってくれないことをいいます。
銀行が貸し渋りを渋りを行う理由は、主に以下の2点があげられます。
- 自己資本比率を上げて自行の経営を安定させるため
- 融資が焦げ付くリスクを減らすため
景気が悪くなると、倒産が増えて貸し倒れ金額が増えるため、銀行の財務状態も悪化してしまいます。
そのような時には、貸し渋りをして融資総額を減らすことで自己資本率を上げようとしたり、貸し倒れを恐れて大手優良企業しかお金を貸さなくなったりします。
こうすることで、銀行の財務内容を良くし、経営を安定させようとするのです。
しかし、中小の会社にとっては銀行から融資を受けられるかどうかは大きな問題です。
銀行から貸し渋りをされると経営に大きな悪影響を及ぼし、最悪の場合、資金繰りが悪化して黒字でも倒産してしまうことがあります。
現在問題なく融資を受けている場合でも、環境が変われば貸し渋りを受ける可能性もゼロではありません。
そのため、経営者は常に貸し渋り対策を考えておく必要があります。
銀行の貸し渋りに対抗するには
銀行の貸し渋りに対抗するには、会社の業績や信用度を上げ、銀行がお金を貸しやすい状態にすることが大切です。
貸し倒れリスクが低くなればなるほど、貸し渋りされる可能性が低くなります。
銀行としても融資を行って利息収入を得なければ業績があがりません。
そのため、会社の状態を良くすれば貸し渋りにはあわず、むしろ積極的に融資をしてくれるようになります。
それでは、銀行に貸し渋りされた時の対策を具体的にみていきましょう。
会社の信用格付けを把握し、業務を改善する
銀行が貸し渋りをするのは、会社のなんらかの点に不安を感じており、将来の貸し倒れリスクが高いと判断しているからです。
銀行をはじめとする金融機関では「信用格付けシステム」を利用して会社を分析し、融資して良いかどうかを判断しています。
信用格付けは以下のような5つのカテゴリーに分類されており、格付けが「要注意先」より悪くなると、貸し渋りを受ける可能性が高くなります。
場合によっては正常先の場合でも、融資をしてもらえないときもあります。
格付けランク | 区分 | 内容 |
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1~6 | 正常先 | ・財務内容に問題がない |
7 | 要注意先 | ・業務内容が低調 |
・財務内容に問題がある | ||
・元本返済や利息の未払い(事実上の延滞) | ||
・赤字である | ||
8 | 破綻懸念先 | ・経営破綻するほどではないが経営に問題がある |
・経営改善計画の進捗状況が悪く、経営破たんの可能性が高い | ||
・実質債務超過 | ||
9 | 実質破たん先 | ・法的な経営破たんには陥っていないが、経営難が深刻 |
・経営再建の見通しがたたない | ||
・長期に渡る大幅な債務超過 | ||
10 | 破綻先 | ・法的、形式的な経営破たんの事実がある |
・破産や清算、会社整理などの理由で経営破たんしている |
貸し渋りをされたときには、「会社のどの部分がマイナス評価を受けているのか」「信用格付けが低い理由は何なのか」を把握しましょう。
それがわかれば、その問題点に対して対策をすることができます。
融資担当者と良好な関係を築いていると「自社の評価」に関して話を聞きやすくなりますので、日頃からこまめに連絡を取り合うことも大切です。
このように会社のマイナス評価を減らすことができれば、それだけ信用格付けも上がりますので、貸し渋りされない可能性が高くなります。
この格付けは、1年に3回、以下のタイミングで見直しが行われます。
- 年度末の決算時期
- 3か月ごとに行われる四半期決算時期
- 不定期に行われる財務状況などの随時見直し(抜き打ちチェック)
逆に言うと、格付けが上がるチャンスは年に何回もある、ということです。
特に抜き打ちチェックはいつ行われるかわかりませんので、常に資金繰りや財務内容を良くしておくことが大切です。
銀行も収益をあげるために優良な会社には融資を行いたいと考えていますので、貸し渋り対策には、自社の業績や財務内容を良くすることが一番効果的な方法といえます。
事業計画書を提案する
銀行の融資では、業績が良いか、利益が出ているかという「結果」を重視する傾向にあります。
そのため、前期に比べて決算が悪いと評価が大きく下がり、追加融資を断られる等の貸し渋りを受ける可能性が高くなります。
このような場合は、綿密な事業計画書を作成し、銀行側に会社の将来性を説明しましょう。
事業計画書に盛り込むべき項目は、以下のようになっています。
- 経営理念やビジョン
- 競合他社と比較した会社の強み・弱み
- 市場ニーズ
- 市場規模
- 商品サービスの内容と特徴
- 組織
- 業務フロー
- マーケティング計画
来期以降の業績改善に向けて、具体的な方策を明記してあるとより効果的です。
事業計画書の他に、「損益計算書」「資金繰り計画書」も用意しましょう。
また、業績を上げるための具体的な営業目標を記した「社員別目標計画書」があると説得力ややる気も伝わりやすくなります。
このような資料の作成にはかなりの時間と手間がかかりますが、銀行融資には最重要視される書類といっても過言ではありません。
銀行に「業績が上がる見込みはない」と思われてしまうと、貸し渋りを受ける恐れがあります。
会社の将来性をきちんと理解してもらうためにも、正確な数字に基づいた詳細なものを作成しましょう。
また、銀行の会計上、会社の信用格付けが低くなればなるほど、銀行が積まなければならない貸し倒れ引当金が大きくなるという仕組みがあります。
例えば、正常な会社には融資額の5%ほどの引当金を積立てることになっています。
しかし、要注意先になると、約50%程の引当金を積まなければならなくなり、銀行の収益を大幅に圧迫してしまうことになるのです。
このようなことから、「将来信用格付けが下がる可能性がある」と判断されてしまうと、貸し倒れ引当金を多く積まなければならない可能性があるということで、貸し渋りを受ける可能性が高くなります。
銀行側のこのような懸念を払しょくするためにも、事業計画書を提出して「会社事業の将来性や、収益性の改善」をアピールすることは有効です。
将来信用格付けが下がる可能性が少ない、と判断してもらえれば、貸し渋りにあう可能性も低くなります。
事業計画書や資金繰り表ではこまかな数字まで綿密にチェックされるため、中途半端なものは逆効果にもなりかねません。
これらの書類作成はかなり神経を使う作業ではありますが、貸し渋りを避けるためにもしっかりと作成するようにしましょう。
銀行が貸し剥がしを行う理由
銀行の貸し剥がしとは、すでに会社に融資している資金を返済期限前に銀行が強引に回収することをいいます。
銀行が貸し剥がしを行う理由としては、以下の2点が挙げられます。
- 銀行の自己資本比率を上げるため
- 親会社や大口取引先が経営悪化に陥り、連鎖的な経営悪化が起こると判断された場合
貸し渋りと同じように、銀行自身の自己資本率を上げようとするときに貸し剥がしが起こります。
また、会社の親会社や大口取引先の経営が傾いた場合、売上が減ったり売掛債権が支払われなくなる可能性があります。
このような場合、連鎖的に会社の経営が悪化するかもしれないと判断され、貸し倒れを防ぐために貸し剥がしが起こります。
このように、これまで期日通りの返済を続けていて、取引内容に特に問題がない場合であっても「貸し剥がし」が起こる場合があるため注意が必要です。
融資を受けた会社にとっては、まだ返済期限が残っている資金を突然「一括返済してくれ」と迫られるため、大問題です。
資金繰りに大きな影響が出ます。
ただ、この貸し剥がしには法的な強制力はありません。
「借り入れ契約に期限が定められている以上は、その期限がくるまで、債務者は返済しなくても良い」という「期限の利益」という法則があるからです。
これは法律ではっきりと示されているため、会社側は貸し剥がしの要求を断ることができます。
銀行との関係悪化を心配して要求を受ける会社もあるようですが、貸し剥がしの要求に応じる必要はありません。
銀行の貸し剥がしに対抗するには
貸し剥がしは「期限の利益融」があるため、法律をたてに対抗することができます。
しかし、融資を実行してもらうときに交わす「金銭消費貸借契約書」には、「期限の利益の喪失」という項目が設けられており、そこで決められた項目にひとつでもあてはまる場合は銀行は強制的に返済を求めることができる、と記載されています。
つまり、貸し剥がしに対抗するには、「期限の利益の喪失」に記載された項目にあてはまらないようにする必要があります。
その項目の内容は、銀行との契約書によって異なりますが、おおむね以下のようなことが記載されています。
- 返済に1度でも遅れたことがある
- 提出書類に虚偽記載があった
- 契約内容に虚偽があった
- 破産手続きや民事再生手続きを開始したり、強制執行や滞納処分があった
特に、返済はたとえ1日遅れただけでも「期限の利益」の喪失理由になりますので、遅れずに返済していくことが大切です。
この「期限の利益の喪失」がどのような場合に起こるのかということを、契約書を見て確認しておきましょう。
まとめ
銀行の貸し渋りや貸し剥がしは、会社の経営状態が良く、取引内容に問題がないときにでも起こる可能性があります。
会社にとっては資金繰りは重要な問題ですので、突然貸し剥がしや貸し渋りが行われたときに対応できるように、銀行融資以外の他の資金調達方法も考えておく必要があります。
ノンバンクのビジネスローンのは、金利は高いものの審査がゆるく、即日で事業資金を調達することができますので、資金繰りに役立ちます。
また、売掛債権を現金化できるファクタリングは審査が一切ないので、会社の財務状況がかなり悪いときでも、スムーズに現金を手にすることができます。
貸し渋りや貸し剥がし対策がうまくいかず、融資を受けられなくなった場合でも慌てることはありません。
銀行融以外資にも、会社の資金繰りに活用できる資金調達方法がありますので、それらをうまく活用して会社経営を行っていきましょう。